過去から未来へのラビリンス Venezia2010
もうすっかり秋のような天候と日差しと気温のオランダ、仕事もプライベートも日常に戻り、夏休みの記憶が薄れかけています。
でもたまにフッと思い出すイタリア・ヴェネツィアの空気と雰囲気は忘れられず、これまで行ったことのあるイタリアのいろんな都市・町とは違う何かに とりつかれているようです。
風景や町並み、水のゆったりとした流れ、水面に揺れる影が好きでした。
ヴェネツィアに流れる”時間”や”空気”が好きでした。
では・・・ヴェネツィアに再び行くか・・・というと、行きたい国・地域・町は世界中に・ヨーロッパ中にたくさんあるし、よっぽどの機会がない限り 残念ですがヴェネツィアには もう行くことはないと思うのです。
ローマやフィレンチェには、きっとまた行ける・・・と思うんですけどね。
だからでしょうか、ヴェネツィアには恋しい気持ちが残ります。
ですが・・・
私が今回の旅で、ヴェネツィアの第一歩で 感じた印象は・・・”なんて古く朽ちた町!”
これからヴェネツィアに行かれる方、スミマセン!
写真や映像でよく見る機会のあった壮大でキラキラしたイメージの サン・マルコ広場や大運河CanalGrande の印象が強すぎたからでしょうか。
下左写真は朝日をあびるゴンドラ、下中写真はキラキラの大運河を渡るゴンドラ、下右写真は大運河にかかるリアルト橋Ponte di Rialto。
現在 大理石のリアルト橋は、13世紀 この大運河に最初にかけられた橋(当時木造、1592年に大理石に改築)。
普段オランダやベルギーなどで見慣れている中世の街並み・ゴシック調の街並みとも、全く違うからでしょうか。
そりゃそうですよね、1000年も続いたヴェネツィア共和国です。
ヴェネツィア旅行前半、私の目や脳には ヴェネツィアのその朽ちた風景を どう処理(理解)してよいのかわからず、路地や運河の景色を見るたびに???な時間が続きました。
美しいのか、小汚いのか・・・?!
下写真右はゴンドラで橋をくぐる風景、もちろんゴンドラクルーズもしてみました。
見る風景に対しての違和感(???な気持ち)を感じながらも、しばらく経てば見慣れるもので、そのうち生活の匂いがプンプンするような路地裏や下町の風景が、しっくりと”ヴェネツィア”の風景として見えてきました。
華やかな観光スポットの裏にある この朽ちた町には、1000年も前からの人々のにぎやかな文化があり、今もそのままなんだな・・・と、やっと私の中で何かが消化できた気がしました。
4泊5日のヴェネツィア旅行、自由気ままに過ごしました。
自由気ままに路地を歩きました。
運河(カナル)や 網目のように広がる細い運河(リオ)を見ながら細い路地を歩き・・・突き当たった路地を適当に曲がり・・・。
気の向くまま 足の向くまま歩けば・・・、あら?ここに出るのね?・・・と、地図を見て 自分の居場所を確認しました。
でも逆に、目的地を決め、地図を見ながら歩いても・・・あら?ここさっきのとこじゃない?どうしてここにつながるの?・・・みたいに迷うんです(笑)。
何度も通る路地や近くの広場はさすがに覚えましたが、ちょっと離れると、ちょっと違う路地へ入ると、地図を見ても見なくても、結局 迷うんです(笑)。
でも不思議、迷っても、ぜんぜん怖くないんです。
道に迷っても どこか安心感があり、スリや強盗にあう気配も 他のヨーロッパの都市に比べれば全然感じませんでした。
それがヴェネツィアの独特の空気だと思うのです。
だからこそ 気ままに迷える ヴェネツィア・ラビリンス(迷宮)!!
路地で迷い、次の角を曲がれば・・・そこには 中世の装いの仮面の紳士が!!
細い運河や路地に迷っているだけでなく、時間さえもさかのぼって迷子になっているかのようでした。
きらびやかな観光スポット、反面 一歩 路地へ踏み込むと そこはラビリンス。
ヴェネツィアの壮大な時間の渦に飲み込まれ、運河と路地のラビリンスへ、そして時間の渦のラビリンスへ 吸い込まれていくようでした。
本当に 不思議な空気の流れるヴェネツィアです。
ベネツィア島内は150を超える運河が177の島々を分け、400にもおよぶ橋(太鼓橋)が架かっています。
現実的なことをいえば、ヴェネツィアは現在の時代と逆行した時間の中に存在する島。
たとえば、オランダはほぼ100パーセントに近い”バリアフリー”国家ですが、ヴェネツィアは、運河に架かる”太鼓橋”は なんとっ!みんな階段。
橋の下を 船やゴンドラが通り抜けるため、太鼓橋になっているのです。
旅行者の多いこの島・ヴェネツィアですが、スーツケースのキャスターなんてまったく役に立ちません。
それにベビーカー、太鼓橋を渡る度に持ち上げて 運河を渡らなくてはなりません。
誰かの助けが必要です。
お年寄りや 足・腰を悪くされている方にも大変そうです。
さらに、島内の飲食料・ゴミの運搬。
毎朝早朝 波止場や観光中心エリアでは、キャスター(コロコロ?)による人力のゴミの収集や食材の運搬作業を見かけました。
旅行中、ご病人と救急隊を見かけましたが、救急の場合はやっぱりゴンドラや水上バスタイプの救急車(船?)なのでしょうか・・・?
現在 世界中で見直される”自転車”も、この島では禁止されているそうです(というか、階段ばかりで通りを走れない)。
便利になれた現代人には、想像を超える苦労がついてまわる島の生活です。
1000年を超える歴史と文化を抱えるヴェネツィア、海抜2メートルの厳しい自然環境のこの島を守るためには、これから守っていくためには、想像を超える苦労と努力が必要なんだということを 目の当たりにしました。
観光客一人一人が、自分の出したゴミくらいは自分で島外へ運び出す義務(!?)を法律で決めてもよいのではと思ったくらいです。
とはいえ、私自身4泊5日の間、どれだけワインボトルを空け(苦笑)、どれだけゴミを出したことか・・・。
華やかな観光スポットの裏で、ヴェネツィアの人たちの努力あってこその世界遺産ヴェネツィアということを実感しています。
だからこそ、ヴェネツィアへ対する想いが格別なのかもしれません。
旅は終わり私はオランダで日常の生活に戻っていますが、心はヴェネツィアの迷宮に迷いこんだままのようです。
でも もう少し 迷ったままでいたい・・・。
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